僕のイーノックカウ探検はまだまだ続く。
おっきなお魚を売ってたおじさんが、普通のお魚を売ってるとこにはお料理を売ってるお店もあるよって言ってたでしょ?
だから今度は、そのお料理を売ってるとこを探検する事にしたんだ。
「あっ、なんかいいにおいがしてきた」
普通のお魚を売ってるとこを通って先に進んでたら、お魚のにおいに混じっておいしそうなにおいがしてきたんだよね。
だから僕、そのにおいのする方に走ってったんだけど、そしたら角を曲がった先に大きな通りがあって、その両側にいっぱいお料理の屋台が並んでたんだ。
「わぁ! こんなにいっぱいお店があるんだったら、きっと僕の知らないお料理も売ってるよね」
前にお母さんたちとイーノックカウのお店を周った時は、お姉ちゃんたちが食べたいって言ってたお菓子のお店しか見て周らなかったでしょ?
だから僕、こういうとこにはどんなお料理が売ってるんだろうって、わくわくしながらお店を見て周ったんだ。
そしたらね、お肉やお魚を焼いて出してるお店や、何かおっきな鍋でぐつぐつ煮たのを出してるお店とか、とにかくほんとにいろんな種類のお店があったんだ。
「こんなにいっぱいあったら、みんなどれ食べたらいいのか迷っちゃうね」
何でそう思ったのかって言うとね、お肉を焼いてるお店だけでも鉄板を使ってお野菜と一緒に焼いてるお店や串に刺したのを焼いてるお店、それに焼いてあるすっごくおっきなお肉をナイフで切って売ってるお店なんてのもあったんだもん。
それにね、お肉の種類もジャイアントラットやブルーフロッグみたいに森で獲れるのもあれば、年をとってお乳を出さなくなった牛やヤギのとかもあるんだよ。
その上、お店ごとにつけてるたれも違うもんだから、今日はお肉を食べよって思ってここに来てもどれがいいかって、絶対迷っちゃうって僕、思うんだ。
「それに、お魚もいろんなお料理があるんだよなぁ」
ここ、お魚を売ってるとこの近くだからなのか、ほんとにいろんな種類のお魚のお店があるんだよね。
お料理をするのが大変だっていうエメラルドフィッシュのお店は流石に無かったけど、串にさして焼けるくらいのお魚はみんなどっかのお店が焼いてるし、そうじゃないのも煮てたりお野菜と一緒に焼いてたりしてるお店がいっぱいあるんだよ。
そんないっぱいあるお店の中でもね、僕はあるお店で売ってるものを見てちょっとびっくりしたんだ。
「あれ、お魚だよね?」
それ、多分お魚だと思うんだけど僕の腕くらいの太さがあるものをぶつ切りにして、それを3つ串にさして焼いてるお料理だったんだ。
じゃあ、何でそれを見たびっくりしたかって言うと、その焼いてるお魚の皮が黒っぽい灰色しててちょっと気持ち悪い見た目だったんだから。
「他においしそうなお店がいっぱいあるのに出してるって事は、もしかしておいしかったりするのかなぁ?」
でもね、そんな見た目なのにこんなにお店がいっぱいあるとこで売ってるくらいだもん。
もしかしたらすっごくおいしいのかもって思った僕は、そのお魚を焼いてるおじさんに聞いてみる事にしたんだ。
「おじさん。それ、お魚だよね? おいしいの?」
「ん? おいしいかどうかと聞かれると、どちらかと言えばあまりおいしくないかな?」
そしたらこんな答えが返ってきたもんだから、僕はすっごくびっくりしたんだ。
だってさ、美味しくないもんを売ってるなんて僕、全然思わなかったんだもん。
「じゃあさ、なんで美味しくないもんを売ってるの? ここ、他にいっぱいお店が並んでるのに」
「ああそれはな、こいつが他の料理よりはるかに安いのと、ごく一部だがこいつがものすごく好きだっていうもの好きな常連さんがいるからなんだよ」
だから何で売ってるの? って聞いてみると、おじさんはそう言いながら屋台の前に置いてあった板を指さしたんだよね。
そこにはクレイイールの串焼きって、多分このお料理の名前と、そのお値段が書いてあったんだ。
「あっ、ほんとにすっごく安いね」
「だろ?」
そこに書いてあったこのお魚の串の値段は鉄貨5枚。
これだけだとよく解んないだろうから他の串焼きがどれくらいなのって言うと、安くておいしいから人気があるって言われてるブルーフロッグの串焼きが銅貨3枚。
前の世界で言うと300円くらいかな?
それよりも安い串って言うと、お乳を出さなくなった牛とか卵を産まなくなった鶏のお肉になるんだけど、それでも銅貨1枚はするんだよ。
それもこの3つの串焼きは、みんな大人の男の人だったら一度に3本くらい食べちゃえるくらいの大きさなんだ。
それなのにこのお魚の串は、輪切りになったふっといのが3本も刺さってるんだもん。
大人の人だってこれ一本でお腹いっぱいにいなっちゃう大きさなんだから、ほんとびっくりするくらい安いよね。
「でもさ、なんでこんなに安いの?」
お魚って事は、どっかで獲ってくるか育てるかしないとダメでしょ?
もうお乳を出さなくなった牛のお肉だってもっと高いのに、そんなお魚が何でこんなに安いのか気になった僕はおじさんに聞いてみたんだ。
そしたらね、このお魚は川とかに入らなくっても獲れる上に、一匹がすっごく大きいからなんだってs。
「川に入んなくていいの?」
「ああ。こいつはちょっと変わった習性をもつ魚でな、夜になると川から出てきて泥になっている場所に半分埋まりながら眠るんだ。だから夜に獲りに行けば誰だって簡単に捕まえられるのさ」
これと同じようなお魚は他の場所にもいるらしいんだけど、その殆どが池や沼なんだって。
だから水の中にも泥がたまってるとこがあるけど、イーノックカウのそばにあるのは川でだからそこに泥なんてたまらないでしょ?
そんなとこじゃ寝られないからって、このお魚はきっと川から出てきてそういうとこで寝てるんじゃないかなぁっておじさんは笑ったんだ。
「そっか。このお魚さんは泥のベッドが無いとダメなんだね」
「ああ、そうだな。でもそのせいか、この魚はちょっと泥臭くてなぁ」
イーノックカウの近くの川はね、おっきな川なのに流れが速いんだって。
だからそこで獲れるお魚は川に住んでるのにあんまり泥臭いのはいないんだって。
でもこのお魚は泥の中で寝るからなのか、いけや沼に住んでるお魚とおんなじように泥臭いそうなんだよね。
「その上骨も多いし、血には少量だが毒まであるんだぞ」
「ええっ!? そんなの食べても大丈夫なの?」
「ああ。どうやらその毒は熱に弱いらしくてな、よく焼くと全部消えちまうらしいんだ」
わざわざ短くぶつ切りにして串焼きにしてるのは、食べた人のお腹が痛くならないようにしっかり焼けたかを確認する為でもあるんだってさ。
それにね、このお魚って他のお魚よりもすっごく脂が多いんだって。
だからちょっとぶよぶよしてるらしいんだけど、ぶつ切りにして焼く事で脂が落ちてちょっとだけ食べやすくなるそうなんだ。
「普通のお魚だったら、油がいっぱいある方が美味しいって言うのに落としちゃうんだね」
「ああ。この魚は身が柔らかいからな。脂が多すぎるとぶよぶよでちょっと気持ち悪い食感になるんだよ」
焼くとちょっと硬くなるから、油さえ落とせばちょっとは美味しくなるんだって。
それにね、落ちた油が薪に落ちると燃えて煙になるから、それに燻される事でいいにおいになるんだってさ。
「そっか。脂を落とした方がいい事もあるんだね」
「ああ。焼く時の香りだけなら、他の魚よりもいいくらいなんだぜ」
おじさんの言う通り、目の前で焼けてるお魚の串からは、本当にいいにおいがしてるんだよね。
あんまりおいしくないって言われなかったら僕、このにおいで買って食べてたかも?
「おっと、そう言えば安いもう一つの理由、凄く大きいってのの説明がまだだったな。捌く前の奴があるから、一度見てみるか?」
「あるの? うん! 見せて」
おっきなお魚は別のとこで見たけど、こんなお魚はどこにも売ってなかったもん。
だからどんなすっごいのが出てくるのかなぁって、僕はわくわくしながらおじさんが出して来てくれるのを待ってたんだ。
「ほら、これがぶつ切りにする前のクレイイールだぞ。どうだ、デカいだろう」
そう言っておじさんが見せてくれたお魚はね、長さが僕の慎重くらいあるほんとにすっごくおっきなお魚だったんだよ?
でもね、僕はそのお魚を見て、まったく別の事にびっくりしてたんだよね。
何でかって言うとそのお魚は、大きさは全然違ったんだけど前の世界にいたウナギってお魚そっくりだったからなんだ。
読んでいる途中で気が付いた方もいると思いますが、醤油に続いてウナギまで発見してしまいました。
そしてこの世界の砂糖は、前の世界でいう所のザラメそっくりなんですよね。
という事はお酒とみりんはないですが、蒸留酒で代用する事で一応ウナギのかば焼きが作れるという事です。
この世界にまた一つ、美味なるものが!
……でも、ご飯が無いんだよなぁw